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『ものがたりを結ぶ』道新夕刊コラムNo.10

  • 高橋リサ
  • 2018年8月27日
  • 読了時間: 2分

10回目となりました。貴重な機会に感謝いたします。

(北海道新聞 夕刊みなみ風 リレーエッセイ「立待岬」2018年8月27日掲載)

『供養灯ろうのともる町で』

去年の冬。ある娘さんとお会いした。物語の創作が好きで、設定や人物、書き出しがどんどん浮かぶ。でも、自分で納得できる最後がどうしても見つけられない。書きかけのお話ばかりが積み重なっていき、悩んでいるというのだった。 綺麗事や紋切型で結ぶのは簡単。でも、そんな事の為にペンを握り、時間を使ってきたかと思えば虚脱感が襲う。創作のノウハウは私も持ち合わせないものの、どんな時に自分の童話の結末が見えたかをお話すると、彼女は真剣にメモをとった。

終戦の月である八月。奪われた言葉を取り戻すように、当時の事が報じられる。函館では、作文を通じありのままの生活を見つめる綴方教育を児童に指導した教師六人が有罪になったという。一体どんな罪。書けそう!と頬を赤くして帰っていった少女の笑顔が霞む。

書くとは何だろう。『火垂るの墓』作者、野坂昭如氏の『戦争童話集』のあとがきには、こうあった。読者の年齢は考えなかった、ただ童話という形ならあの体験を書けると思い、童話にしたと。

作品には読者がいる。でもその前に、作品の中に生き、生かされてほしい存在がある。それは作者の忘れ難い出会いや経験の欠片・・・それらに誠実でいたい。そうして生まれる結末は、教訓でなく、祈りに近づく。

思い出された、冬の出会い。彼女が大切に物語の結びを育んでくれている今を願う。(童話作家)

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