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『おかえり、キキ』道新夕刊コラムNo.26

  • 執筆者の写真: Lisa Takahashi
    Lisa Takahashi
  • 2021年5月22日
  • 読了時間: 2分

更新日:2021年8月11日

北海道新聞夕刊みなみ風コラム【立待岬】2021年5月21日掲載

 

キキのお母さん"コキリさん"の 二つ目の魔法のことなんて、 気にかけたことがありませんでした。

こどもごころに夢見たのは、 ホウキで空を飛ぶ魔法で。

でも、飛べないと解って生きる今、そのもう一つを思い出しました。 私を見た、ある日の母の一言で。

『おかえり、キキ』   高橋 リサ 

 「あなた魔女にでもなるの?」様子を見に来た母が言う。年々ふえる薬草のビン。ドクダミ、スギナなど十種以上に。窓辺はすっかり葉っぱや根っこの日干し場所。先日はちょうど、タンポポの根っこを煎っておとしたタンポポコーヒーを両親にふるまったところだった。それが、『魔女の宅急便』のキキの母親コキリさんみたいね、と言う。

 原作を読み返した。すると真正血統のコキリさんの魔法は二つ。箒で飛ぶ。薬草を育てて薬にする…これだけ。キキは地道な薬作りが嫌い。飛ぶ力を頼りに宅配を開業。でも修行先から帰郷した夜、両親に不安を打ち明ける。気づくと自分がイヤなものまで届ける人になっていて、自信を失ってしまったと。

 文化芸術世界の修行も楽じゃなく。半狂乱の私にいつも両親は遠巻きに声をかけた。「畑の豆なってるぞ」「たまには庭も見なさい」。生返事すらしなかった。七飯宅に娘を残し、親は転居。荒れた畑にとりどりの雑草が生えた。ある時、貧乏まぎれに煎じてみた。庭が薬箱だと知った。

 子供の頃に奇跡を信じ、隠れて箒に乗ってみたのは私だけではないのでは。でも箒は飛ばず。自分はただの人間で、不思議の力は無いと気づき、そうして魔女を諦めた。コキリさんがキキに願った、ふたつ目の魔法を見落としたまま。

 物語の終盤に描かれる、薬草栽培に励むキキの姿。自らを癒し、人を癒す魔法を信じて、キキは再び輝き出した。

初夏、頑張りすぎるキキ達へ、伝えたい。飛ぶだけが魔法じゃないよ、と。(童話作家)

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