『こころのありか』道新みなみ風コラムNo.1
- 高橋リサ
- 2017年5月20日
- 読了時間: 2分
(北海道新聞夕刊みなみ風リレーエッセイ 「立待岬」2017年5月15日掲載)

『こころのありか』
母との家での会話。「ゴジラの最新作、野村萬斎さんがゴジラを演じたんだって」「えっ、萬斎さんが中にいるの!」中にいるんじゃない。彼の動きを記録して、CG(コンピュータグラフィックス)で映像のゴジラを作ったんだと私が説明すると、「今のゴジラは着ぐるみじゃないの」母は、寂しそうだった。
CGゴジラも、裏で汗する制作陣がいるのは同じこと。でも、「あれは本物の怪獣なんだ!」と子どもに夢があるように、大人にも大人の期待があった。「着ぐるみで本物の役者が頑張っている」。等身大の温もりを偲ぶ、母の寂しさは解る。
昨年、人工知能が執筆した小説が文学賞の選考に通過し、函館でも話題になった。その陰で、作家志望の青年が、僕ら不要になるの、とネットに不安を寄せていた。おや、と感じた。青年側が、人の価値も温もりも、自ら疑っていることに。
他人の苦労を背負えないように、人間の身に降るあの日の哀しさや幸せは、機械も代わりに背負えない。人に生まれた境遇の中、書く物語に宿るものが、誰かの今日に寄り添う。人工知能に小説を書かせる研究も、代替し難い人の創作過程を敬いながら進んでいる。
毎日、胸痛む事件も多く、心の行方が問われる。童話では、人も木も風も、時に機械も心を宿し、願いや境遇を語り合う。その優しい形式を、この時代にこそ愛したい。顕微鏡なしで美しいものを見つけ、全てが本物に見えた、あの童心を原点に。(童話作家)
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たかはし・りさ 室蘭市生まれ。6歳で函館に移り、函館東高から東北大大学院教育学研究科修士課程修了。和太鼓と言葉による音楽隊「ことの音ユニットNeri―ネリ―」主宰。七飯男爵太鼓創作会会長。郷里をテーマに表現活動に取り組む。七飯町在住。30歳。
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