『言の葉は散らずに』道新夕刊コラムNo.25
- Lisa Takahashi
- 2021年3月17日
- 読了時間: 2分
北海道新聞夕刊みなみ風コラム【立待岬】2021年3月15日掲載
あの時、こちらにいる私のような人間に対し、被災地の方がかけてくださったその言葉を。
その温情を。あの土地の方々の優しさを。片時も、忘れることができません。

『言の葉は散らずに』 高橋 リサ
コウモリかと思ったら、違った。庭の桜の木の枝先、風雪に耐えて繋がれたままの、一枚の葉っぱに目がとまる。
二十歳前後の六年間を宮城で過ごした。土地柄に魅了され、就職先も決めた。だが、事情の急転で帰郷を迫られ、2011年3月に七飯に帰ったその直後。東日本大震災は、それまで苦楽を共にした方々との距離を、一気に引き離した。何も分かることができない、外の人間になったと思った。
帰郷後、函館の大学に勤めつつ、毎年の地震発生時刻に、座席で黙祷した。体が震えてトイレに駆け込むと、決まって同期の若い職員も赤い目を拭いてそこにいた。震災の年に東京から戻った彼女もまた、哀しみに寄り添えない哀しみを抱え、何もできず情けない、目の前の仕事をするしか・・・と泣いていた。
ある年、追悼行事を終えた被災地の方からメールがきた。「実際こちらは悲惨でも、前を向かねば生きられません。それゆえの明るさや共生もまたあるのです。けれどそちらの方々は、苦難を案じるしかなくて、きっと周りとの温度差も感じ、むしろ孤独でお辛いでしょう」。届いた言葉の懐の深さが、外野に弾かれていたはずの心を包んだ。余裕など無いはずなのに。何も分かるまいと言われて当然なのに。東北の方々の、その温情が好きだった。それを忘れまいと誓った旅立ちの日に、心を帰してくれた一言。
もしかしてあの一葉は、十年前からそのままで・・そしてきっと、この先も・・・。枝先がうるむ。(童話作家)
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