ゆうぎり
ほんのすこしだけ、待っていて。
いま、美しいものをみせてあげる。
花は咲かせたままでいて、
でも、実はつけないで、待っていて。
その実を、ふくらましきったあとなら、
あなたはきっと、何もかもに満足して、
わたしのやっと用意した風景など、
みても、なにも思わないだろう。
そんなこと 命の役割に比して
たいして意味のないことと…
でもどうか
花でいるあなたには わかってほしい。
虫をまち 風をまち
じぶんが目覚められるのかどうか
不安で朝露をこぼすあなたに 届けたいと
思っている。
深い深い霧
手品師のように山をかくして、
馬鈴薯の花たちに話していた。
夏の始まる前の夕。